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宿泊施設におけるノロウイルス対応標準マニュアル

1.ノロウイルスとは
●特徴

幅広い年齢層において感染性胃腸炎の原因となるウイルスで、特に冬季に多発します。 100個以下という少量で人に感染し、腸管内でウイルスが増えます。 患者のふん便やおう吐物には1グラムあたり100万から10億個もの大量のウイルスが含まれています。
●感染経路
経路1人のふん便中のノロウイルスが、下水を経て川から海へ運ばれ、二枚貝の内臓に蓄積されます。 それを、十分に加熱しないで食べると感染します。
経路2ノロウイルスに感染した人が、十分に手洗いを行わずウイルスが手についたまま調理をすると、 食品が汚染され、その食品を食べた人が感染します。
経路3ノロウイルスを含むふん便やおう吐物を処理した後、手についたウイルスや、不適切な処理 で残ったウイルスが、口から取り込まれ感染します。

●感染した時の症状

感染後、24~48時間で、下痢、吐気、おう吐、腹痛、発熱などの症状が出ます。通常3日以内に 回復しますが、ウイルスは感染してから1週間程度ふん便中に排泄され続けます。
●消毒方法
他の微生物などと比べると熱に強く、85℃で1分以上の加熱が必要です。
逆性石けん、アルコールの消毒効果は十分ではありません。塩素系漂白剤の次亜塩素酸ナトリウム は効果があります。

※次亜塩素酸ナトリウムは絨毯や畳等を変色させるため注意して下さい。


2.感染を予防するためには~一人ひとりのみなさんへ~
●手洗い

ノロウイルスによる感染症は、多くの場合、ウイルスに触れた人の手を介して感染が拡大します。 社員には手洗いを習慣づけることが、感染予防の基本です。用便後、排泄物の処理のあと、 調理や食事の前には必ず手を洗ってください。
●手洗いの基本
石けんを使い十分にこすり洗いをし、水で洗い流すことにより、ウイルスは大幅に減少します。
手洗い後の手拭用タオルは共用せず、ペーパータオル等を使い毎回タオルを交換するか、個人用 タオルを利用してください。

★水道の蛇口は洗う前の手で触れているので、手と一緒に洗うかペーパータオルを利用して蛇口を 締めると、手の再汚染を防ぐことができます。

●排泄物・おう吐物の処理

ふん便やおう吐物の処理は、処理をする人自身への感染と、施設内への汚染拡大を防ぐため、 適切な方法で、迅速、確実に行うことが必要です。
【あらかじめ準備しておく物品】
使い捨て手袋、マスク、ガウンやエプロン、拭き取るための布やペーパータオル、ビニール袋、 次亜塩素酸ナトリウム、専用バケツ、その他必要な物品

●おう吐物等の処理時の換気

おう吐物等の拭き取りと消毒が徹底されていない場合は、乾燥した後にウイルスが室内に拡散し、 汚染が拡大するおそれがあります。そこで、おう吐物等を適切に処理し、さらに室内の適正な換気を 行うことが大切です。
おう吐物の処理時とその後は、大きく窓を開けるなどして室内に新鮮な空気を入れ換気を行います (室内にウイルスを滞留させることのないようにしてください。)。
換気設備(換気扇等)がある場合には運転してください。
●リネン類の消毒

汚物がついたおむつやシーツ等のリネン類を取り扱うときは、取り扱った人の手にウイルスが 付着し感染を拡大させてしまう可能性があり、二次感染を防ぐための適切な処理が必要です。

【汚物がついたリネン類の洗濯、消毒】
汚物がついたリネン類を取り扱うときは、必ず、使い捨てのビニール手袋とマスク、エプロンを 着用し、汚物が直接皮膚に触れたり、飛沫を吸い込んだりすることのないように防護してください。
汚物がついたリネン類は専用のビニール袋等に入れ、周囲を汚染しないように十分注意してください。
汚物を十分に落とした後、塩素系消毒液(0.02%次亜塩素酸ナトリウム)に10分間浸すか、 85℃で1分間以上になるように熱湯消毒してください。
消毒後、他のものと分けて最後に洗濯してください。

※リネン類の運搬や保管に使用する容器等は洗浄及び消毒を行い、常に衛生的に管理してください。
●入浴

施設内で下痢やおう吐をした利用者がいる場合には、ノロウイルスを含めた感染性胃腸炎が疑われます。 症状がある人は最後に浴槽に入るかシャワーのみにするようにしましょう。
●手を触れる場所や身のまわりの物の清潔・消毒

施設内で人が直接手を触れる場所は、ノロウイルスに汚染されている可能性があります。 また、子どもは身のまわりの物を直接口にしてしまうことが多く、汚染されていると二次感染の 原因ともなります。
(例)手すり、ドアノブ、水道の蛇口、机、イス、引き出しの取っ手、 車椅子の押し手、ベッド回り、三輪車、幼児お散歩用のキャリー、おもちゃ等
【清潔の保持・消毒】
手を触れる場所や身のまわりの物はきれいな布で水拭きするなど、常に清潔を保つようにします。
感染予防のため、多数の人が手を触れる場所や身のまわりの物は定期的に消毒してください(手すり、ドアノブ、水道の蛇口などを、0.02%次亜塩素酸ナトリウムに浸した布などで拭く等。)。
施設内で下痢やおう吐をした利用者があり、ノロウイルスを含めた感染症胃腸炎が疑われる場合は、 特に汚染されやすいトイレやその周辺などを中心に消毒の頻度を増やす必要があります。
次亜塩素酸ナトリウムは金属を偏食させるため、金属部分に使用した場合は10分程度たったら 水拭きしてください。また、塩素ガスが発生することがあるので、使用時は十分に換気してください。
●日ごろからの健康管理

ノロウイルスによる感染を予防するための具他的な方法を示しましたが、感染や感染拡大を防ぐためには、 まず早い段階でノロウイルスの感染が疑われる利用者・社員を把握すること、また宿泊施設では施設外 からノロウイルスを持ち込まないようにすることが重要です。
日ごろから利用者の健康観察を行ってください。
施設管理者は社員の健康診断の結果や健康状態の確認をしてください。


3.ノロウイルスによる食中毒を予防するためには~調理従事者の方へ~
●食中毒予防の原則
食材由来のノロウイルスを失活(殺菌)する

二枚貝(カキ、アサリ、シジミ等)はノロウイルスを蓄積していることがあるので、 二枚貝の調理は、中心部が85℃で1分以上になるように加熱して、ウイルスを確実に失活(殺菌) してください。
調理器具等からの汚染を防止する

二枚貝の調理に使用した調理器具、シンク等は十分に洗浄し、熱湯(85℃)で1分以上加熱又は 0.02%次亜塩素酸ナトリウムで消毒してから他の食品に使用します。調理が終わった後は、同じように 消毒して乾燥後、衛生的に保管してください。
調理従事者からの食品汚染を防止する

食品の盛り付け作業時には、使い捨て手袋を使用してください。 おう吐、下痢等の症状がある調理従事者は、食品に直接触れる作業は控えてください。 調理従事者の手を介しての食中毒を防止するためには、手洗いが重要です。ノロウイルスは 一般の食中毒細菌と異なり、逆性石けん、アルコールの消毒効果は十分ではないので、石けんで よくこすり洗いをした後、水で十分に洗い流し、ウイルスを落としてください。
●調理従事者自身が感染しないために
発生時の注意点

発生時の食品回収の際には、手袋等を使用して食べ残しに直接ふれないようにしてください。 おう吐物で汚れた食器類は、「排泄物・おう吐物の処理」を参考に、必ず調理場外で 消毒してから調理場へ戻してください。
日常生活での注意点

調理従事者がノロウイルスに感染すると、大規模な食中毒につながることがあるので、日常生活 においても配慮が必要です。食生活では生ものに注意し、外出後やトイレの後の手洗いを徹底 してください。家族が下痢・おう吐をした時には、「排泄物・おう吐物の処理」を参考に 処理してください。


4.感染症・食中毒が発生したら
施設において、感染症・食中毒が疑われる事例が発生した時には、感染の拡大を防止するため、 次のような対策をとる必要があります。
1.発生状況の把握
(1)症状の確認:下痢・おう吐・発熱、その他の症状について確認します。
(2)施設全体の状況の把握
日時別、棟・フロア・部屋別の発生状況を把握します。
受診状況、診断名、検査結果及び治療内容の確認をします。
普段の有症者数(下痢、おう吐等の胃腸炎症状、発熱等)と比較します。
2.感染拡大の防止
(1)社員への周知:施設管理者は感染症等の発生状況を関係社員に周知し、対応の徹底を図ります。 日ごろから連絡方法を整備してください。
(2)感染拡大の防止
手洗い、排泄物・おう吐物の処理方法を徹底して実行します。
消毒の頻度を増やすなど、発生時に対応した施設内消毒を実施します。
3.関係機関等への連絡
(1)保健所等への報告

感染症や食中毒が疑われる場合は、保健所等に連絡して、対応について指示を受けてください。
このマニュアルは「東京都福祉保健局健康安全室感染症対策課・食品監視課・環境水道課」の 編集・発行による「社会福祉施設等におけるノロウイルス対応標準マニュアル ダイジェスト版」 を参考にしています。


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